むらさき(ムラサキ) ** 万葉植物 **
2023.08.02 Wednesday
むらさき(ムラサキ)
万葉仮名 -- 紫草 紫 牟良佐伎
紫(ムラサキ)
託馬野(つくまの)に生(お)ふる紫草(むらさき)衣(きぬ)に染(し)めいまだ着ずして色に出でにけり
笠女郎 万葉集 [巻三 395]
この歌は笠女郎が大伴家持に贈ったもの。
「託馬野に生えた紫草を着物に染めつけ、まだ着てもいないのに、人に知られてしまいました」
紫草になぞらえて「恋の思いが実を結ばないうちに、他人に知られてしまった」と訴えている。
2017年5月12日(金)
奈良・春日大社の神苑「萬葉植物園」へ。
園内には、歴史のある希少な萬葉植物のほとんどが植栽され、大切に育てられている。
藤園の藤の花はすでに盛りを過ぎており、今年の最終を飾る遅咲き白野田藤のみを愛でた。
園を出ようとした時に、咲き始めた「むらさき(ムラサキ)」の花に会えた。
「むらさき(ムラサキ)は、現在の自然界では滅多に出会えないという植物です。
このような小さな白い花が咲く植物から紫色が……!?
と思ったけれど、傍の説明板を見て納得。
太い根を乾燥させると赤味を帯びた紫色になり。
「紫根染」の重要な染料として使われ、名前はこれに由来すると。
紫草は古くから栽培され、万葉集に詠まれた植物の中でも代表格とされ、17首に詠まれている。
あかねさす紫野(むらさきの)行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖振る
額田王 万葉集 [巻一 20]
額田王が大海人皇子に贈ったこの歌からは、紫草が自生地で保護栽培されていたことがよみとれる。
紫は灰さすものそ海石榴市(つばきち)の八十のちまたに逢へる児や誰(たれ)
万葉集 [巻十二 3101]
この歌からは、紫染めには椿の木灰から採った灰汁が必要だったことがうかがえる。
紫草は古代、貴族が着用する紫の衣服の染色に使われた。
紫色は日本だけでなく、エジプト・ギリシャ・ローマ・中国などでも、高貴な色とみなされ尊重されてきた。
ムラサキ(紫)
万葉名:むらさき
現代名:ムラサキ
学名:Lithospermum erythrorhizon
科名:ムラサキ科
分類:多年草 乾燥した草原に生える
草丈:40〜90cm
花期:6月〜7月
茎は直立し、高さ40〜90cm。
葉は無柄で互生し、長さ3〜7cm、幅1〜2cm。
茎とともに粗い毛がある。
花は小さく白色で5弁、カタツムリ状花序の下方から上方へ咲き進む。
開花が進むにともなって、花序の軸は伸長し直立する。
花筒は長さ約6mm、先端は5裂して平開、萼筒は5深裂する。
子房は4全裂し花後4つの分果となる。
分果は灰褐色で平滑、光沢があり長さ約3mm。
地下には太い根があり、この根から紫色の染料シコニンがとれる。
紫草染はムラサキの根の浸出液と灰汁とに交互に布をつけて染める。
染めあがるまで数日かかるが、日光によって退色しやすい。
また、紫根は漢方で解熱・解毒の薬、皮膚病・やけどの妙薬などにも利用される。
昔は日本全土に分布し、栽培もされていたようですが。
現在では、絶滅の危機にひんした希少植物。
野生種は国内に約1,000株ほどと言われている。
と説明書きがありました。
栽培は難しく、種が入手できたとしても株を増やしていくのは至難の業とか。
そのような貴重な紫草の根で、紫根染めをしてみたいという好奇心が湧いてきた。。。
外部リンク:
色の万華鏡 吉岡幸雄 監修 色の万華鏡 紫
伝統的な方法で染められる「紫根染め」が紹介されています。
参考図書:やまと花萬葉 平凡社大百科事典
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コメント
花を着物に染め付けて着ていないことがバレた
こういう事に秘めた気持ちを詠むって
一生かけても思いつかないです。
むかしのひとは感性豊かだなぁ^ ^
| 🈁 | 2023/08/13 7:19 AM |
紫のハートが所々出てくるのが、かわいくて良いですねー。紫の話だからですよね♥️。
| Nick Ollie | 2023/08/03 9:01 PM |
可愛い花ですねー!
白い花なのに「紫」
根っこから出る色だったのですね
| AKAZUKIN | 2023/08/02 5:29 PM |
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むらさき(ムラサキ)
万葉仮名 -- 紫草 紫 牟良佐伎
紫(ムラサキ)
託馬野(つくまの)に生(お)ふる紫草(むらさき)衣(きぬ)に染(し)めいまだ着ずして色に出でにけり
笠女郎 万葉集 [巻三 395]
この歌は笠女郎が大伴家持に贈ったもの。
「託馬野に生えた紫草を着物に染めつけ、まだ着てもいないのに、人に知られてしまいました」
紫草になぞらえて「恋の思いが実を結ばないうちに、他人に知られてしまった」と訴えている。
2017年5月12日(金)
奈良・春日大社の神苑「萬葉植物園」へ。
園内には、歴史のある希少な萬葉植物のほとんどが植栽され、大切に育てられている。
藤園の藤の花はすでに盛りを過ぎており、今年の最終を飾る遅咲き白野田藤のみを愛でた。
園を出ようとした時に、咲き始めた「むらさき(ムラサキ)」の花に会えた。
「むらさき(ムラサキ)は、現在の自然界では滅多に出会えないという植物です。
このような小さな白い花が咲く植物から紫色が……!?
と思ったけれど、傍の説明板を見て納得。
太い根を乾燥させると赤味を帯びた紫色になり。
「紫根染」の重要な染料として使われ、名前はこれに由来すると。
紫草は古くから栽培され、万葉集に詠まれた植物の中でも代表格とされ、17首に詠まれている。
あかねさす紫野(むらさきの)行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖振る
額田王 万葉集 [巻一 20]
額田王が大海人皇子に贈ったこの歌からは、紫草が自生地で保護栽培されていたことがよみとれる。
紫は灰さすものそ海石榴市(つばきち)の八十のちまたに逢へる児や誰(たれ)
万葉集 [巻十二 3101]
この歌からは、紫染めには椿の木灰から採った灰汁が必要だったことがうかがえる。
紫草は古代、貴族が着用する紫の衣服の染色に使われた。
紫色は日本だけでなく、エジプト・ギリシャ・ローマ・中国などでも、高貴な色とみなされ尊重されてきた。
ムラサキ(紫)
万葉名:むらさき
現代名:ムラサキ
学名:Lithospermum erythrorhizon
科名:ムラサキ科
分類:多年草 乾燥した草原に生える
草丈:40〜90cm
花期:6月〜7月
茎は直立し、高さ40〜90cm。
葉は無柄で互生し、長さ3〜7cm、幅1〜2cm。
茎とともに粗い毛がある。
花は小さく白色で5弁、カタツムリ状花序の下方から上方へ咲き進む。
開花が進むにともなって、花序の軸は伸長し直立する。
花筒は長さ約6mm、先端は5裂して平開、萼筒は5深裂する。
子房は4全裂し花後4つの分果となる。
分果は灰褐色で平滑、光沢があり長さ約3mm。
地下には太い根があり、この根から紫色の染料シコニンがとれる。
紫草染はムラサキの根の浸出液と灰汁とに交互に布をつけて染める。
染めあがるまで数日かかるが、日光によって退色しやすい。
また、紫根は漢方で解熱・解毒の薬、皮膚病・やけどの妙薬などにも利用される。
昔は日本全土に分布し、栽培もされていたようですが。
現在では、絶滅の危機にひんした希少植物。
野生種は国内に約1,000株ほどと言われている。
と説明書きがありました。
栽培は難しく、種が入手できたとしても株を増やしていくのは至難の業とか。
そのような貴重な紫草の根で、紫根染めをしてみたいという好奇心が湧いてきた。。。
外部リンク:
色の万華鏡 吉岡幸雄 監修 色の万華鏡 紫
伝統的な方法で染められる「紫根染め」が紹介されています。
参考図書:やまと花萬葉 平凡社大百科事典
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こういう事に秘めた気持ちを詠むって
一生かけても思いつかないです。
むかしのひとは感性豊かだなぁ^ ^
白い花なのに「紫」
根っこから出る色だったのですね